「私は幸せ者だ」

壊れたぬいぐるみ

「いい友達も悪いダチも」

割れた窓ガラス

「うぜえぐらい作った」

やぶれたカーテン

「犯罪からボランティアまで」

たばこと酒だらけの部屋

「人生経験ならパンピーの七倍はあるつもりだ」

引き裂かれた服

「彼氏だって八人いた」

山のようなわら人形

「次の誕生日には私はこの世にいないらしいけど」

血の付いたカッター

「私はサイキョーに幸せモンだ」

首のないぬいぐるみ

- a thousand happys -

2004年2月7日2時37分

東京都内某病院屋上

藍沢咲樹十七歳はそこにいる

下に星空が広がっていて、

上には闇だけが広がっている

ここなら一瞬で一番高いとこから低いとこまでいける

私は最後の場所をここに選んだ

どうせなら幸せのまま消えて無くなりたい

ここに一から十まで書いたたばこがある

最後へのカウントダウン

これを吸い尽くしてゼロのフィルターに届いたら

私もゼロになる 風が音を出してうなりをあげる

カチッ

カチッ、カチッ

・・・・・・・

・・・・・・しまった

かっぱらってきた自慢の二十万zippoも風には勝てなかった

チクショウ、

自分の死に方ぐらいきめさせろよ

シュポッ

「これならつくだろ?」

「なっ、」

私の肩先からバーナー式のライターがのびてきた

振り向くとそこには白い髪のふざけたやろうがたっていた

顔は整っているが、おそらく東洋の人間ではない

服装と時間からして仕事のないホストヤローか?

だからって何でこんなトコに・・・

「あんた、なにモン?面会時間は七時間前に終わってるよ」

「ボクは千」

(聞いてねーよ)

「千の運命にしばられし者、

そして君の幸せを求める者」

今時のホストもずいぶんと商売がヘタクソになったモンだ

水商売も不景気なのか?

「悪いけど私、人生サイキョーのイベント真っ最中だから、あんたにかまってるひまねーんだわ」

「それじゃあそのイベントにボクも混ぜてよ」

冷ややかなあたしの目を見ながら嘘みたいな笑顔でこっちを見てくる

(しつけぇ)

「これがイベントのオープニング?」

そういってさっきのライターを私の口の先に延びてるモンに掲げる

私は思わずそのまま吸ってしまう

「はやくどっかいっちまえよ、じゃねえとこのまま天国までつれてっちまうぞ」

人工の星空を見ながら私は冷ややかに言った

「君は消えたいの?」

「どっちかって言うとオメーに消えてもらいたいな」

口先にのびるカウントダウンが5まできた

「それができたらどれだけ幸せなんだろうね」

「あ?」

カウントダウン、4

「ボクは消えることはできないけど、君の望みは叶えることはできる」

「できねーよ」

白い煙と白い息で電気の星空がかすんで見える

不意に背中に軽い衝撃が走る

私の体は空中を舞って星空に近くなる

口から離れたヤニはまだ2にはいったとこ

心臓が動きまくってる

私はこいつに突き落とされた

 

「これが君の望みなんだろ?」

何でこいつにとどめさされなきゃいけないんだよ

何で一人で最後迎えてないんだよ

こんなラストはいやだ、

イヤだ

ヤツが上で見下ろしている

イヤだ

風で息ができない

イヤだ

私はこのまま死ぬ

イヤだ

私はあいつに殺された

いやだ

「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」  

そう叫んだ瞬間

黒い陰が上から落ちてきた

壁を走って落ちてきた

そいつはさっき私を突き落としたヤツ

「千・・・・・」

抱きかかえるなりいきなり私を窓に向かって投げつけた

私は中にある複数のぬいぐるみの上におちる

ここは私の部屋、私の割った窓

(・・・偶然?)

「そうだ、あいつは・・・」

ふるえて動かない足を無理矢理動かして窓から下を見てみる

暗くてほとんど見えないけど

地面に横たわっているような人影がかすかに見える

真っ白な頭が街灯に照らされていた

「うっ・・・」

おもわず口を押さえる

私は狂いそうになりながらもエレベーターに向かっていった

全身がガクガクしている

あいつは何がしたかったんだ?

何のためにやったんだ?

チクショウ

いみわかんねぇよ  

 

一階についてロビーを抜けて外に出てみる、

そこで私は今度こそ本当に狂うかと思った

もう狂っているのだろうか

「やあ、おそかったね」

そいつはさっきの街灯の下にたっていた

どこも外傷はない、

あるとすれば服が軽く軽傷というぐらいか・・・

「今時のホストはずいぶんと頑丈なんだな」

「ボクは千の運命にしばられし者、千の幸せを作るか千年たたないと死ねないんだ」

「何それ?漫画?だったらあんたは年いくつよ」

「これでも七百年は生きてる。」

「なにそれ?すんげージジイじゃん」

「今度は君の名前を教えてくれる?」

「藍沢 咲樹。サキってよんで」

なんでだろう こいつを見て心の中で少しほっとした

人が死にかけたんだから

人間としてほっとするのが普通なのかもしれないけど

それでもほっとしたんだ・・・

わたしは笑っている

すんごいちょっとだけど

半年ぶりぐらいに心の中で笑みを漏らしている  

 

「錬金術?」

「そう、千年前ヨーロッパに生まれたもう一つの科学の形」

わたしたちは近くの公園にむかっていった

中のベンチに座って二人で煙を吹いている

とりあえず面白そうなのでさっきからこいつの話術にはまってやることにしてた

さっきのはどんなマジックを使ったかはわからないが言葉のマジックぐらいは見抜いてやるつもりだ

「錬金術の科学は今の科学とは違い目に見えないものの研究をしていたのさ、

幽霊とか、魔法とか、運命みたいな非科学的といわれるものをね」

こんなせりふをすごいまっすぐな目で行ってくるからおもわず聞き入ってしまう

「そしてその錬金術を研究してる奴らに当時犯罪者だった僕はある呪いをかけられたんだ」

「呪い?さっきの千の運命ってヤツ?」

「そう、言うなれば千の呪い。奴らは運命を千の数字で呪ったんだ。

だからボクは千の悲しみと千の喜びを体験しなくちゃいけないし、千の苦しみを受けてきた。」

そういってるとき、表情は変わってないけれどふいんきで何となく分かった。

こいつはホントに苦しんでる いつも苦しんでいるからだろうか、

苦しみに敏感な私がそこにいた

「そしてさっき言った通りボクは千の人間を幸せにするか千年生きなければ死ぬことはできない、

だからどんなに深い傷を受けてもどんなに血が出てもすぐに元通りになってしまう。」

そういって千は自分の手首をナイフで切った、

すごい勢いで血が流れるがそれも一瞬にして止まる。

私の心臓も止まるかと思った

「あんた、ホントに・・・」

「そしてこんな体だからこそ、」

一瞬の出来事だった

千は私の体を突き飛ばした瞬間、

千の周りを一瞬にして黒服の銃を持った人間がかこって

その手に持ったものを突きつけている

「ボクは千の組織に狙われているんだ」

何でだろう、

そんな状況でも千は笑顔を見せている

「ようやく見つけたぜ、ヴァンパイアヤロウ」

暗闇からもう一匹ホストが下りてきた

今度のヤツは今囲ってる奴らとは違い自分の服と思われる偉く個性的な服を着ている

顔つきも千と正反対でどちらかというとワイルドといった感じだ

おそらくこいつらのボスザルといったとこだろう

「またおまえか、神楽」

珍しく千が感情的な表情を見せる

「お食事見つけてご機嫌なトコ悪いんだけどここは一発モルモットになってくれねぇか?よォ!!」

ボスザルのかけ声とともに全員一斉に手に持ってるものをぶっ放す

思わず腰を抜かした私は見た、

さっきヴァンパイアといわれた悪魔を・・・

千はそのまま一瞬にして両手に持っているナイフで周りの人間を切り刻んだ

幾多にも及ぶ弾丸をすり抜けてすべてをなぎ払っている

全部の黒服を赤服に替えたと思うとすぐにさっきのボスザルにナイフを突きつける

「相変わらずやるじゃないヴァンパイアチャン、

ゾウも一発のバリバリの麻酔銃だったんだがかすりもしねーとはなァ」

「お前らみたいなクソガキに捕まるほど俺はあまくない」

神楽はそう聞いて笑みを漏らしながら答える

「だったらこれならどうだ?」

私には何が起こったのか分からない、

何でそうなっているのか分からない。

ただ、目の前が炎に包まれている

「まさか、錬金術!?」

千がそう叫ぶ、おそらくこれも錬金術という名の魔法なのだろう。

「どうだ、クソガキのあがきもなかなかのもんだろ。

そのまま火葬されちまいな!クソバケモンが!!」

千は動こうとしない

「どうした!?熱くて動くこともできねぇか?」

何でだろう、全く苦しみの表情を見せない。

そのまま千は神楽を見て言い放った

「こんなもので俺が止められると思ってるのか?」

「ア?うそつけよ、600℃はある業火だぜ?」

「こんなモノが錬金術の訳がない、これは現代の科学の力。

千度の温度に耐える俺の運命にはかすりもしない。

錬金術師だったら解呪の法を聞き出そうと思ったが・・・」

そういって炎にやかれながらも神楽に近づいていく

そして首をつかんでこう言い放つ

「なんで俺がヴァンパイアといわれ恐れられたか知っているだろう、

てめえみてえな無知なクソガキを千の屍へとかえらからだ」

そこにはヴァンパイアという名の死に神の笑みがあった

「クッ、グオッ・・・、かかりやがったな、ヴァンパイア。

これでチェックメイトだ」

そういうと神楽は狂気の笑みとともに千の手首をつかみ断末魔の叫びが辺りに響く

「ぶち殺せ!!」

断末魔のこだまの先にいたのは黒服の屍に立つマシンガンを持った男だった。

身動きのとれない千を幾多にも及ぶマシンガンの弾丸が襲う、

そのはずだった、

でも弾丸が襲ったのは私の体だった

なんでだろう、

足が勝手に動いた

千を守るようにして小さな体をあいつの前に持っていった

そしたら私の腹から下は蜂の巣になった

それだけ、

それだけなんだ・・・

「サキ!!」

私が打たれた後、

千は一瞬にして神楽とマシンガンを持った男を二つにする  

「何で、何でこんな事を・・・サキ・・・」

千は私の体をだきおこしていった

「そろそろイベントもしおどきかなって、それだけ」

千が私の前でまた表情を出してくれた、

涙、にあわねえよ。

チクショウ

「千の悲しみを越えてきたんじゃないの?」

「悲しみは悲しみだ、いくら乗り越えたって悲しいモノは悲しいんだ」

ホント、どんな化け物だよ

「あんた、ホントにヴァンパイアのモデルなら私の血を吸ってよ。

話聞いてるとこのまま永遠の命とかはなさそうだけど。

でも・・・、それでもわたしは今死ぬけど

あんたの中で血だけでも永遠に生きるんだ。」

「・・・・・・わかった。それが君の望みなら・・・」

そういって私の頭に手を回す

やばい、目がかすんできた・・・

そのまま目を閉じる

千の吐息が私の首にかかってきた

体の感覚がもうほとんどない

それでも千を感じる

たぶん私は千が好きだ

人生で初めて感じた感情

今までとは全然違う

好きな男を守って終わった私

それでいいんだ

それでこのままそいつの中で生きる

私は今サイキョーに幸せなんだ

幸せなんだ・・・

千の吐息が首から離れていく、

(え?)

千の

唇が

私の

唇を

襲った

そして意識がとぎれていく

(千・・・)

 

 

「咲樹!!」

私はまた目が覚めた

いつも見る病院の天井

「母さん?」

「よかった、ホントによかった・・・」

そういって涙でぐちゃぐちゃになった母さんが私を抱きしめる

「どうしてここに?」

千とあってそのまま打たれて・・・

「直ったのよ!」

「え?」

「不治の病がなおったのよ!あなたはこのままずっといきられるの!」

「うそ・・・」

ぐちゃぐちゃになったからだが元に戻ってる、

いつもの苦しい感じもなくなってる

「千・・・・・・・・」

 

私はこのままあいつみたいに千年生きるのかもしれない

でもいいんだ、

前と違って目標ができた

好きな人がいる

形だけの好きだったのとは違う

それだけで今までの千倍幸せなんだ

「943人目」

そういって病院を立ち去るモノがいた

真っ白な髪をしていて

嘘みたいな笑顔をしている  

今なら何となく分かる

 

最初に言っていた千人の人間を幸せにするって話

あれは錬金術師の呪いなんかじゃない

アイツが自分自身にかけた

言葉という名の永遠の呪いなんだ  

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